【令和元年台風19号】相続放棄の熟慮期間の特例
東日本大震災のときにも特例措置が出されましたが、今回の令和元年台風19号でも広範囲に渡り大きな被害が出ましたので、令和元年台風19号により被災された方対象に、相続放棄に関する特例措置が出ています。
このページには、以下のことを書いています
通常の相続放棄
亡くなった方の相続について相続放棄をする上で重要なことは、原則として相続が開始したことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所で手続きをすることです。
「原則として」と書いていますように、例外的に3か月を過ぎてから相続放棄の手続きをした場合でも認められるケースはありますが、通常の相続の場合は、3か月以内に家庭裁判所に申し立てをするようにすべきです。
くわしくは、相続放棄のページをご覧ください。
特例措置の内容
「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」に基づき、令和元年台風19号を特定非常災害に指定(同法2条1項)されました。
そして、「令和元年台風第19号による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」が令和元年10月18日に公布・施行され、
- 令和元年10月10日において、令和元年台風19号に際し災害救助法が適用された災害発生市町村の区域に住む相続人について
- 熟慮期間(相続の承認するか放棄するかを判断する期間)を令和2年5月29日まで延長する
ことになりました。
特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律
第6条(相続の承認又は放棄をすべき期間の特例に関する措置)
相続人(次の各号に掲げる場合にあっては、当該各号に定める者)が、特定非常災害発生日において、特定非常災害により多数の住民が避難し、又は住所を移転することを余儀なくされた地区として政令で定めるものに住所を有していた場合において、民法(明治29年法律第89号)第915条第1項の期間(この期間が同項ただし書の規定によって伸長された場合にあっては、その伸長された期間。以下この条において同じ。)の末日が特定非常災害発生日以後当該特定非常災害発生日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日の前日までに到来するときは、同項の期間は、当該政令で定める日まで伸長する。
一 相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡した場合 その者の相続人
二 相続人(前号の場合にあっては、同号に定める者)が未成年者又は成年被後見人である場合 その法定代理人
政令第129号 令和元年台風第十九号による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令
内閣は、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律(平成8年法律第85号)第2条第1項及び第2項前段、第3条第1項、第4条第1項、第5条第1項、第6条並びに第7条の規定に基づき、この政令を制定する。
(特定非常災害の指定)
第1条 特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律(以下「法」という。)第2条第1項の特定非常災害として令和元年台風第19号による災害を指定し、同年10月10日を同項の特定非常災害発生日として定める。(特定非常災害に対し適用すべき措置の指定)
第2条 前条の特定非常災害に対し適用すべき措置として、法第3条から第7条までに規定する措置を指定する。(行政上の権利利益に係る満了日の延長期日)
第3条 第1条の特定非常災害についての法第3条第1項の政令で定める日は、令和2年3月31日とする。(特定義務の不履行についての免責に係る期限)
第4条 第1条の特定非常災害についての法第4条第1項の政令で定める特定義務の不履行についての免責に係る期限は、令和2年1月31日とする。(法人の破産手続開始の決定の特例に関する措置に係る期日)
第5条 第1条の特定非常災害についての法第5条第1項の政令で定める日は、令和3年10月9日とする。(相続の承認又は放棄をすべき期間の特例に関する措置に係る地区及び期日)
第6条 第1条の特定非常災害についての法第6条の政令で定める地区は、令和元年台風第19号に際し災害救助法(昭和22年法律第118号)が適用された同法第2条に規定する災害発生市町村の区域とする。
2 第1条の特定非常災害についての法第6条の政令で定める日は、令和2年5月29日とする。(調停の申立ての手数料の特例に関する措置に係る地区及び期日)
第7条 第1条の特定非常災害についての法第7条の政令で定める地区は、令和元年台風第19号に際し災害救助法が適用された同法第2条に規定する災害発生市町村の区域とする。
2 第1条の特定非常災害についての法第7条の政令で定める日は、令和4年9月30日とする。附則
この政令は、公布の日から施行する。
特例措置の対象エリア
令和元年台風19号に際し災害救助法が適用された災害発生市町村の区域が対象となります。
対象エリアの詳細は、内閣府ホームページの「災害救助法の適用状況」をご覧ください。
特例措置の対象者
令和元年10月10日に上記対象エリアに住所を有していた相続人であることが必要です。
- 被相続人が被災者であるか否か
- 相続の対象となる財産が対象エリア内にあるか否か
については関係ありません。
令和元年10月10日に対象エリアに住所を有していたことについては、
家庭裁判所が、住民票、勤務証明書、在学証明書、公共料金の支払に関する記録などの各種の資料に基づいて、その生活の本拠が対象区域にあったかどうか
で判断することになるようです。
だから、住民票がなければ、この特例の適用が受けられないというわけではないのでご注意ください。
特例措置の対象となる相続
令和元年台風19号に被災されてお亡くなりになった方の相続に限られません。
令和元年10月10日よりも前に発生した相続で、熟慮期間の終期が令和元年10月10日以降の日になるケースも、令和2年5月29日まで熟慮期間が延長されることになります。
(参考)法務省ホームページ
令和元年台風第19号の被災者である相続人の方々へ
~政令により延長された相続放棄等の熟慮期間は,令和2年5月29日までです。~
なお、一般的な相続放棄のことについては、当事務所ホームページの相続放棄のページをご覧ください。
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