被相続人の同一性を証する書面としての登記済証

相続による名義変更(相続登記)を申請する際に添付書類の中に『被相続人の同一性を証する書面』というものが必要になります。

そのことは、「相続登記における被相続人の同一性証明」のところに書いていますので、お読みいただければと思います。

相続登記における被相続人の同一性証明

 

簡単に言うと、登記簿に載っている所有者(所有権登記名義人)Aさんと、戸籍謄本に載っているAさんが同一人物であることを証明するものです。

 

平成29年3月23日民二第174号通達

この通達のことは、「相続登記における被相続人の同一性証明」のところにも書いていますが、内容は以下のとおり。

被相続人の同一性を証する情報として住民票の写し等が提供された場合における相続による所有権の移転の登記の可否について

相続による所有権の移転の登記(以下「相続登記」という。)の申請において,所有権の登記名義人である被相続人の登記記録上の住所が戸籍の謄本に記載された本籍と異なる場合には,相続を証する市区町村長が職務上作成した情報(不動産登記令別表の22の項添付情報欄)の一部として,被相続人の同一性を証する情報の提出が必要であるところ,

当該情報として,

  • 住民票の写し(住民基本台帳法第7条第5号,第12条。ただし,本籍及び登記記録上の住所が記載されているものに限る。)
  • 戸籍の附票の写し(同法第17条, 第20条。ただし, 登記記録上の住所が記載されているものに限る。)
    又は
  • 所有権に関する被相続人名義の登記済証(改正前の不動産登記法第60条第1項)

の提供があれば,不在籍証明書及び不在住証明書など他の添付情報の提供を求めることなく被相続人の同一性を確認することができ,当該申請に係る登記をすることができる。

 

本籍地の記載がある住民票に登記簿に書かれた住所があれば、登記簿上の所有者Aさんと戸籍謄本のAさんが同一人物であると認めますということです。

 

戸籍の附票とは、戸籍の別紙のようなもので、住所移転の経緯が書かれたものですが、これも本籍地の記載のある住民票と同様に、附票に登記簿上の住所が書かれていれば、登記簿上の所有者Aさんと戸籍謄本のAさんが同一人物であると認めますということになります。

 

引っ越しから長期間経過していると、住民票が廃棄されているということもあります。

それは、住民票の保存期間は、住民登録が抹消されてから(他の自治体に転居してから)5年間となっているからです。

住民票の保存期間は150年に延長されましたが、保存期間が延長されたとしても、すでに廃棄されてしまっている住民票の除票は復活しませんので、住民票が取れないという自体は今後もありえます。

 

住民票の除票の保存期間が150年に

 

同一性を証する書面としての登記済証

前置きが長くなりましたが、被相続人の住民票や戸籍の附票が取れなかった場合に、被相続人の同一性を証する書面として検討すべきものが「登記済証」となります。

登記済証のスタンプ

 

上記の通達の書きぶりからすると、住民票や戸籍の附票が取れる場合でも、登記済証を添付すればよいだろうとは思いますが、私は、まずは戸籍を取るときに戸籍の附票も合わせて取るようにしていますし、お客さまにも取っていただくようにお伝えしています。

 

というのも、登記済証(いわゆる権利証)は、所有者がその不動産を取得した際に法務局から交付された書類ですので、通常は亡くなられた方の自宅で探してもらう必要があります。

どこにあるかわからないという方もが多いですので、まず戸籍の附票を取っていただくようにしています。

 

では、なぜ「登記済証」があれば、登記簿上の所有者Aさんと戸籍謄本のAさんが同一人物であると認めますということになるかというと、先ほどサラッ書いたのですが、

登記済証(いわゆる権利証)は、所有者がその不動産を取得した際に法務局から交付された書類

なので所有者しか持ち得ないものだからです。

 

相続による名義変更(相続登記)をする物件の登記済証を添付すれば、物件の所有者である被相続人から引き継がれて相続人が所持することになったと推認されるから、戸籍謄本のAさんと登記済証に記載された権利者のAさんが同一であるときは、登記簿上の所有者Aさんと戸籍謄本のAさんが同一人である蓋然性が高いといえます。

(「登記研究」831号p138-139)

 

登記済証を添付する際の注意点

名義変更の登記や抵当権の設定登記などを申請する際、登記義務者の登記済証を添付します。

このときは、登記済証の原本を添付しさえすれば、登記完了後、法務局から返還されます。

 

しかし、相続登記に同一性を証する書面として「登記済証」を添付する場合は、住民票や戸籍の附票と同様に、登記完了後に返してもらいたいときは、登記済証をコピーして、「原本と相違ない」旨を記載し押印して、「原本還付」してもらいます。

 

なお、被相続人の同一性を証する情報として提供された登記済証などは、相続登記を申請するためにのみ作成された書面(不動産登記規則第55条第1項ただし書)ではないといえ、これらの書面については原本還付の対象となることから、申請人において原本還付の請求をするときは、還付を求める書面の謄本を作成して提出することとなる。(「登記研究」831号p144-145)

 

※先日相続登記を申請した際、うっかり登記済証をそのまま添付していまして、法務局から補正の連絡を受けましたので、自戒の念を込めて、ブログを書いた次第です(笑)

 

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落石 憲是
落石 憲是司法書士
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