休眠抵当権者(の相続人)が判明したら?【裁判による抹消】

休眠抵当権の抵当権者が個人の場合、ほとんどの場合は供託をして抹消登記をします。
しかし、まれに供託では手続きを進めることができないできないケースもあります。
このページには、以下のことを書いています
抵当権者の戸籍が取れた場合
抵当権者が個人の休眠抵当権の場合、まずは、登記簿に記載された住所・氏名で戸籍を取り寄せることから始めます。
多くのケースでは、戸籍の保存期間経過により廃棄されていて、抵当権者の相続人調査ができないことがほとんどですが、まれに(特に田舎の役場が本籍との場合)戸籍が取れることがあります。
取れてしまうと、司法書士の職責により、相続人を調査することになります。
戸籍の調査となると、多数の戸籍を取り寄せることになり、費用と時間がかかることになりますので、戸籍が取れてしまった時点で、依頼者に手続きを進めるか中止するか判断していただいています。
依頼者が抵当権者(またはその相続人)を知っている場合
以前、親から子への生前贈与のご相談をいただいたときでした。
名義変更の対象物件の登記情報を確認すると、対象物件中の1筆の土地にだけに、明治時代に登記された休眠抵当権が登記簿に残ったままになっていました。
そのことをお客さまにご説明すると、
「その方は知っています。曾祖父にあたる人です。」
とおっしゃったのです。それを聞いた私はビックリ(@@)
土地の所有者の方が昔の抵当権者のことをご存じであることはほとんどないだろうと思っていました。だって、100年くらい前の人のことですから。
しかし、このお客さまのようにご先祖様だったらありえますね。
抵当権者の相続人が判明した場合の休眠抵当権を抹消するには
休眠抵当権の抵当権者を知らない場合は、抵当権者の行方を調査した上で、供託して抵当権の抹消登記をしました。
しかし、司法書士が戸籍を調査して抵当権者の戸籍が取れてしまった場合や、お客さまが「抵当権者(またはその相続人)を知っている」場合には、この方法は使えません。
さて、どうするか?
抵当権者の相続人調査
抵当権者の戸籍が取れてしまった場合は、抵当権者の相続人を探す必要があります。
抵当権者は江戸時代や明治時代にお生まれの方が多いので、戸籍の調査にも1か月以上かかりますし、多数の戸籍関係を取り寄せることになります。
抵当権を抹消する方法の検討
抵当権を抹消する方法は、
- 原則どおり、抵当権者全員と土地の所有者とで共同申請
- 裁判をして、勝訴判決をもとに土地の所有者だけで申請
の2通りが考えられます。
抵当権者全員と共同申請で抹消
原則どおり、抵当権者全員と共同申請で抵当権を抹消する場合、古い抵当権だから抵当権の登記済証は残っていないので、相続人全員に印鑑証明書を準備していただいて、事前通知の方法で登記を行うことになります。
⇒事前通知のことはコチラをご覧ください
登記申請後に、法務局から抵当権者全員に書類が送られ、その書類に署名押印して、期限までに全員が法務局に書類を返送しなければなりません。
だれか一人でも期限までに法務局に返信しなければやり直しになってしまうリスクがあります。
(法務局からも嫌がられるでしょうね。)
裁判手続を利用
だから、当事務所では、裁判手続きを利用して手続きをしています。
相手方(休眠抵当権者の相続人)に、いきなり裁判所から訴状が届いたらびっくりされるでしょう。
たまに、訴状を受け取らない人がいるかもしれません。
すると、裁判手続きが進みません。
そこで、時間はかかりますが、当事務所では急がば回れで、まず抵当権者の相続人全員あてに手紙を送って、抹消登記手続きへの協力依頼をしています。
その後、訴状を提出して、裁判手続きを進めます。

相手方多数の場合は、裁判所に納める切手も高額になります!
相手方が多数のため、訴状の送達に時間がかかることもあるので、初回期日は2か月ほど先に指定されます。
戸籍取得費や裁判の予納郵券などがあるので、供託して簡易な手続きで抹消登記することと比べると、数倍は費用がかかります。
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