定款認証の際に申告する実質的支配者とは?

株式会社や一般社団法人を設立する際に必要な定款認証の場面に関係する、公証人法施行規則が一部改正され、平成30年11月30日から施行されました。
この改正は、法人の実質的支配者を把握することなどにより、法人の透明性を高め、暴力団員等によるマネーロンダリングやテロ資金供与などを抑止することが国内外から求められていることを踏まえて制度化されました。
このページには、以下のことを書いています
改正点
公証人施行規則に第13条の4が加えられます。
第13条の4
1項 公証人は、会社法第30条第1項並びに一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第13条及び第155条の規定による定款の認証を行う場合には、嘱託人に、次の各号に掲げる事項を申告させるものとする。
一 法人の成立の時にその実質的支配者(犯罪による収益の移転防止に関する法律第4条第1項第4号に規定する者をいう。)となるべき者の氏名、住居及び生年月日
二 前号に規定する実質的支配者となるべき者が暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員(次項において「暴力団員」という。)又は国際連合安全保障理事会決議第1267号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法(平成26年法律第124号)第3条第1項の規定により公告されている者(現に同項に規定する名簿に記載されている者に限る。)若しくは同法第4条第1項の規定による指定を受けている者(次項において「国際テロリスト」という。)に該当するか否か
2項 公証人は、前項の定款の認証を行う場合において、同項第1号に規定する実質的支配者となるべき者が、暴力団員又は国際テロリストに該当し、又は該当するおそれがあると認めるときは、嘱託人又は当該実質的支配者となるべき者に必要な説明をさせなければならない。
実質的支配者とは?
犯罪による収益の移転防止に関する法律第4条第1項第4号に規定する実質的支配者については、犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則第11条に規定されています。条文を見てもなかなかわかりにくいですが、おおむね次のとおりです。
実質的支配者とは、法人の事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にある個人をいいます。
具体的には、「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則11条2項」で定義されています。
株式会社では、
- 株式の50%を超える株式を保有する個人
- (1.に該当する者がいない場合)25%を超える株式を保有する個人
- (2.にも該当する者がいない場合)事業活動に支配的な影響力を有する個人
- (3.にも該当する者がいない場合)代表取締役
が該当することとなります。
ちなみに、一般社団法人、一般財団法人も実質的支配者の申告が必要となりますが、
- 事業活動に支配的な影響力を有する個人
- (1.に該当する者がいない場合)代表理事
が該当することとなります。
第11条(実質的支配者の確認方法等)
1項 法第4条第1項に規定する主務省令で定める方法のうち同項第4号に掲げる事項に係るものは、当該顧客等の代表者等から申告を受ける方法とする。
2項 法第4条第1項第4号及び令第12条第3項第3号に規定する主務省令で定める者(以下「実質的支配者」という。)は、次の各号に掲げる法人の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める者とする。
一 株式会社、投資信託及び投資法人に関する法律第2条第12項に規定する投資法人、資産の流動化に関する法律第2条第3項に規定する特定目的会社その他のその法人の議決権(会社法第308条第1項その他これに準ずる同法以外の法令(外国の法令を含む。)の規定により行使することができないとされる議決権を含み、同法第423条第1項に規定する役員等(会計監査人を除く。)の選任及び定款の変更に関する議案(これらの議案に相当するものを含む。)の全部につき株主総会(これに相当するものを含む。)において議決権を行使することができない株式(これに相当するものを含む。以下この号において同じ。)に係る議決権を除く。以下この条において同じ。)が当該議決権に係る株式の保有数又は当該株式の総数に対する当該株式の保有数の割合に応じて与えられる法人(定款の定めにより当該法人に該当することとなる法人を除く。以下この条及び第14条第3項において「資本多数決法人」という。)のうち、その議決権の総数の4分の1を超える議決権を直接又は間接に有していると認められる自然人(当該資本多数決法人の事業経営を実質的に支配する意思又は能力を有していないことが明らかな場合又は他の自然人が当該資本多数決法人の議決権の総数の2分の1を超える議決権を直接若しくは間接に有している場合を除く。)があるもの 当該自然人
二 資本多数決法人(前号に掲げるものを除く。)のうち、出資、融資、取引その他の関係を通じて当該法人の事業活動に支配的な影響力を有すると認められる自然人があるもの 当該自然人
三 資本多数決法人以外の法人のうち、次のイ又はロに該当する自然人があるもの 当該自然人
イ 当該法人の事業から生ずる収益又は当該事業に係る財産の総額の4分の1を超える収益の配当又は財産の分配を受ける権利を有していると認められる自然人(当該法人の事業経営を実質的に支配する意思又は能力を有していないことが明らかな場合又は当該法人の事業から生ずる収益若しくは当該事業に係る財産の総額の2分の1を超える収益の配当若しくは財産の分配を受ける権利を有している他の自然人がある場合を除く。)
ロ 出資、融資、取引その他の関係を通じて当該法人の事業活動に支配的な影響力を有すると認められる自然人
四 前3号に定める者がない法人 当該法人を代表し、その業務を執行する自然人
3項 前項第1号の場合において、当該自然人が当該資本多数決法人の議決権の総数の4分の1又は2分の1を超える議決権を直接又は間接に有するかどうかの判定は、次の各号に掲げる割合を合計した割合により行うものとする。
一 当該自然人が有する当該資本多数決法人の議決権が当該資本多数決法人の議決権の総数に占める割合
二 当該自然人の支配法人(当該自然人がその議決権の総数の2分の1を超える議決権を有する法人をいう。この場合において、当該自然人及びその一若しくは二以上の支配法人又は当該自然人の一若しくは二以上の支配法人が議決権の総数の2分の1を超える議決権を有する他の法人は、当該自然人の支配法人とみなす。)が有する当該資本多数決法人の議決権が当該資本多数決法人の議決権の総数に占める割合
4項 国等(令第14条第4号に掲げるもの及び第18条第6号から第10号までに掲げるものを除く。)及びその子会社(会社法第2条第3号に規定する子会社をいう。)は、第2項の規定の適用については、自然人とみなす。
定款認証手続きがどう変わるのか?
司法書士が株式会社、一般社団法人、一般財団法人の設立登記をご依頼いただきましたら、定款認証の嘱託人として、
- 法人成立時に実質的支配者となるべき者の氏名、住居及び生年月日等
- その者が暴力団員等に該当するか否か
を公証人に申告することになりました。
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