休眠抵当権の抵当権者が昔の農業会だったら?

先祖代々受け継いできた本家や農地の名義変更登記のご相談の際、名義変更の対象物件の登記情報を確認すると、しばしば明治・大正や戦前の昭和のころに設定された抵当権が見つかることがあります。

そのような古い抵当権(休眠抵当権と呼んでいます)には効力はないことがほとんどでしょうが、抹消登記をしない限り、登記簿には残ったままになってしまいます。

 

抵当権者が法人だったら?

休眠抵当権の抵当権者が法人の場合、その法人が今でも存在するのであれば、通常の手続きをすればいいのですが、もうずいぶん前に解散している法人であることもあります。

抵当権者が、今はない「農業会」の抵当権の抹消登記のご依頼をいただいたことがありますが、抵当権者が個人の場合と手続きが異なります。

 

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法人の閉鎖登記簿を調査

まずは、登記されている法人の閉鎖登記簿を取ることから始まります。

登記簿が廃棄済みで取ることができなければ、法人が所在不明ということで抵当権者=個人の場合と同じ方法で手続きをすることになります。

 

以前、当事務所にご依頼いただいた案件では、抵当権者の保証責任●●信用購買販売利用組合の閉鎖登記簿が取れましたが、

 

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昭和19年に●●村農業会の成立により解散し、その権利義務一切は、●●村農業会に承継されていました。

今度は、●●村農業会の閉鎖登記簿を取ると、

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●●村農業会は、「農業協同組合法の制定に伴う農業団体の整理等に関する法律(昭和22年法律第133号)」の第1条第3項の規定により、昭和23年に解散し、昭和25年に清算結了していました。

 

農業会の清算人の調査

つぎは、清算人の調査、つまり清算人の戸籍を取り寄せます。

清算人の中に生きている方がいらっしゃれば、その方との共同申請になりますが、清算人が全員死亡しているときは、裁判所が選任した清算人と手続きを進めることになります。

この事例では、清算人が10人登記されていましたので、その全員の戸籍の調査をします。清算人が載っている戸籍は、除籍か原戸籍ですので、1通あたり750円かかります。調査費用はその人数分かかりますので実費がかさみますが仕方ありません。

清算人がすでに死亡していたり、戸籍が取れずに行方が分からなかったりして、清算人がいない場合は、地方裁判所で清算人選任の手続きをすることになります。

 

清算人選任の申立て

農業会の主たる事務所を管轄する地方裁判所に、清算人選任の申立てを行います。

このとき、申立書に知り合いの司法書士を候補者として推薦していたら、その通りに選任していただけました。

(裁判所によって取り扱いが異なることもあるでしょうから、申立て前に裁判所と打ち合わせをしてください。)

 

※裁判所が選任した清算人の報酬は、いくらくらいが妥当なのでしょうね。
 この事例では、事前にお願いする司法書士に見積書をいただいて、依頼者にOKをいただいて手続きしました。

 

登記申請

あとは、物件所有者と清算人と共同して抵当権の抹消登記をするだけです。

ここでちょっと悩んだのが、登記原因です。通常の住宅ローンの抵当権抹消なら、完済した日付で「年月日弁済」とか、契約を解除した日付で「年月日解除」とします。

 

この事例では、清算人が選任された日以降に、清算人が契約の解除をしてもらうことも考えました。ただ、事情をまったく知らない清算人に判断してもらうのもどうかなと思いました。

解除を原因として抵当権を抹消すると、保証責任●●信用購買販売利用組合から●●村農業会に抵当権の移転登記をした上で、抹消登記をすることになり、費用が増えることになります。
(司法書士としては、申請件数が増えると司法書士報酬が増えるのでありがたいのですが(笑)、やはり、お客さまの費用負担を抑えられるよう工夫すべきと考えています。)

また、抵当権移転の登記原因と日付を検討しなければならなくなります。

 

この案件では、検討した結果「時効消滅」 で消すことにしました。

時効消滅であれば、時の経過で明らかなので、清算人に判断してもらう必要はなくなります。

また、保証責任●●信用購買販売利用組合が●●村農業会に承継された日よりも前の日付で抵当権を抹消することができるので、抵当権の移転もせずにすみ、いいことずくめでした。

 

登記の際の注意点としては、休眠抵当権の抹消登記の場合は登記済証はありませんので、登記義務者である清算人個人の印鑑証明書を添付して、事前通知で手続きしました。

 

※会社・法人の登記では、通常、清算人が就任したら、そのことを登記しなければなりませんが、このようなケースでは、清算結了の登記がされた登記簿と、裁判所の清算人選任決定書を添付すれば、抵当権の抹消登記をすることができます。

(参考)

  • 昭和24年7月2日民事甲第1537号民事局長回答
  • 昭和30年4月14日民事甲第708号民事局長回答
  • 昭和38年9月13日民事甲第2598号民事局長通達
  •  「休眠担保権をめぐる登記と実務」(新日本法規)

 

抹消登記が終わったら、清算人から裁判所に「業務終了報告書」(登記事項証明書付き)を提出して、物件所有者と清算人から裁判所に「清算人を選任する旨の決定を取り消すことに異議はない」旨の陳述書を提出したら、その数日後、清算人選任決定を取り消す決定が出て、手続き終了となります。

 

抵当権者が法人の休眠抵当が残っている場合の留意点

以上のように、抵当権者=法人の休眠抵当権の抹消登記をする場合、

  • 法人の閉鎖登記簿謄本の調査
  • 清算人の戸籍調査
  • 裁判所への清算人選任申立

と、登記申請までに1か月程度かかります。

売却しようとしている物件に休眠抵当権が残ったままの場合は、早めに司法書士へのご相談をオススメいたします。

 

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