地面師による売主のなりすましと本人確認
昨年、大手の不動産会社が地面師に騙されて、購入しようとしていた土地の所有権移転登記ができなかったという事件がありました。その件につき、その会社が平成30年3月6日付でプレスリリース「分譲マンション用地の取引事故に関する経緯概要等のご報告」を発表しています。
そのプレスリリースには、以下のように書いてありました。
所有者と称するA氏(後に、偽者と判明しました。)から、その知人の仲介者が実質的に経営する会社(以下、「X社」といいます。)を中間の売買当事者とし、X社から転売される形式で、当社がこれを買い受けることとなりました。4 月 24日、A氏とX社の間の売買契約、X社と当社との間の売買契約という2件の売買契約を同時に締結するとともに、所有権移転の仮登記申請手続を行った上で、手付金を支払い、仮登記が完了しました。
<省略>
6 月 1日に残代金支払いを実施し、所有権移転登記申請手続を進めましたが、6 月 9 日に、登記申請
却下の通知が届き、A氏の詐称が判明しました。
本件を防げなかった直接の原因は、管轄部署が本件不動産の所有者に関して書面での本人確認に頼ったことにあります。ただ、司法書士も本物と信じたという偽造パスポートや公正証書等の真正な書類が含まれていたという地面師側の巧妙さもあり、また、売買契約締結時には所有権移転請求権の仮登記も実現しているといった事情もあって、初期段階で地面師詐欺を見破ることには、困難な点もありました。
不動産の売買による名義変更(所有権移転登記)は、司法書士の主な業務の1つで、当事務所でもご依頼いただいています。当事務所では、この事件のような大きな取引に立ち会うことはなく、通常は中古の一戸建てやマンションの売買です。
不動産の名義変更登記の場面で、司法書士は「人・モノ・意思の確認」をおこないます。
- 人=売主さんと買主さんの本人確認
- モノ=売買する物件の確認
- 意思=売買する意思があるのか、そもそも判断能力があるのか(認知症などではないか)
を書面や面談を通じて確認をしています。
この事件では、1.の売主の本人確認が不十分だったことにより、なりすましを見抜くことができず、売買代金をだまし取られました。
このページには、以下のことを書いています
どのようにして本人確認をするか?
実際、初対面の人を目の前にして、本人確認をするのは緊張するものであり、また難しいものでもあります。
本人確認をするために、お客さまには、本人確認できる書類などをご準備いただきます。
通常は、運転免許証など顔写真付きの証明書です。顔写真と見比べたり、住所や生年月日、干支などを尋ねたり、物件の取得経緯などを聞き取りながら、判断することになります。
この事件の場合はパスポートで本人確認をしたようですが、それが偽造されたものだったというわけです。
名義変更の登記をする場合は、売主の印鑑証明書が添付書類となりますが、印鑑証明書も偽造されたものだったのでしょう。もしくは、実印を偽造して、印鑑証明書自体は役場で発行されたホンモノだったのかもしれません。
書類に押された印鑑が実印かどうかは、印鑑証明書と照合して分かりますが、偽造された免許証やパスポートをどう見抜いたらいいのでしょうか???
<参考>
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