明治時代に登記された抵当権の抹消登記(抵当権者=個人)
先祖代々受け継いできた本家の名義変更登記のご相談の際、名義変更の対象物件の登記情報を確認すると、むかしの抵当権を年に数回お目にかかります。
このような古い抵当権のことを、『休眠抵当権』と呼んでいます。
このページには、以下のことを書いています
休眠抵当権とは何か?
簡単にいうと、登記簿に残ったままになっている、明治、大正や昭和初期に設定された昔の抵当権のこと。
お客さまから直接、休眠抵当権の抹消登記をご依頼いただくケースもありますが、相続による名義変更登記のご相談の際、登記情報を確認するときに休眠抵当権を発見することもあります。
一般的な住宅ローンを完済した際にする抵当権の抹消登記との違いは、
- 現在の所有者がかかわった抵当権ではないので、支払いが終わっているかどうかがわからない
- 登記簿に載っている抵当権者のことを知らない
という点です。
登記簿に載っている抵当権者かその相続人の行方が分かる場合
登記簿に載っている抵当権者や、その相続人の行方が分かる場合は、通常どおり、抵当権者(の相続人)と物件所有者が共同して(または判決によって)登記を申請することになります。
抵当権抹消の原因日付によっては、抵当権の抹消登記の前提として、抵当権の名義を抵当権者の相続人にする抵当権移転登記が必要になります。
相続が2代3代と発生しているでしょうから、多くの人が関わってくるので、なかなか大変でしょう。
登記簿に載っている抵当権者の行方が分からない場合
よくあるのは、登記簿に載っている抵当権者のことを知らないというケースです。
- 登記簿に載っている抵当権者の行方がわからない
- 弁済期から20年以上経過している
抵当権であれば、
- 弁済期から20年以上経過後に、債権額+利息+損害金の全額を法務局に供託
することで、物件の所有者が単独で抵当権の抹消登記をすることができます。
抵当権者の調査
いきなり供託をするのではなく、まずは、登記簿に載っている抵当権者の戸籍の調査をします。
抵当権者の戸籍が取れたら、抵当権者の相続人を確定するために、戸籍を取り寄せて、相続人を探すことになるでしょう。
しかし、戸籍の保存期間が経過して廃棄されていることがほとんど(?)です。
その場合は、不在籍証明書・不在住証明書を取ります。
次に、抵当権者の登記簿上の住所に配達証明付きで手紙を送ります。
抵当権者は年齢的に亡くなっているはずですので、通常、「宛先不明」で戻ってきます。
これで、登記手続き上、抵当権者の行方が分からないという要件を満たすことになります。(登記申請の際の添付書類の一つにもなります。)
弁済期の調査
つぎは、この抵当権が、弁済期から20年以上経過していることを調べます。
「弁済期」は、現在の不動産登記法では登記事項ではないので、今の登記簿には書いてありません。
しかし、昔の登記簿(閉鎖登記簿謄本)には登記されていることがあります。
上の閉鎖登記簿には、「支拂期」という文言があります。
供託
最後に、供託の手続きとなります。
債権額+債権成立日から弁済期までの利息+弁済期の翌日から供託日までの損害金の合計金額を供託します。
(供託する1週間程度前に、申請書の記載と供託金額について法務局に事前に確認してもらっています。)
いったいいくら供託しなければならないのか、心配になりますよね。
100年以上経過しているので、その利息・損害金が高額になるんじゃないかと。
登記実務では、現在の貨幣価値に換算する必要はありませんので、通常は数百円~数千円ですので、ご心配なく。
(上の登記簿のケースでは、供託金は180円でした。)
ちなみに、損害金の計算ソフトは、法務省のホームページにあります。
このように手順を踏んで。ようやく登記申請ができるようになります。
通常の住宅ローンの抵当権の抹消とは、ずいぶん手順も違うし、手間がかかります。
抵当権は、抹消登記をしなければ、ずっと残ったままです。
このような古い抵当権が残っていることがわかった時点で、手続きをしておくことをオススメします。
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